昨日(6月3日)午後、那覇空港でANAのボーイング737-800と航空自衛隊の大型ヘリコプターCH-47J、JTA(日本トランスオーシャン航空)のボーイング737-400の3機が、あわや衝突しかねない事態が起き、国土交通省は重大インシデントと認定しました。今回は那覇空港で撮影した、それぞれの同型機の写真をご覧いただきますが、撮影日の2月24日は、昨日とは滑走路の向きが逆のRWY36が使用されていましたので、見える景色が違うことをご了承ください。
まず、写真のANAボーイング737-800の同型機が札幌・新千歳空港へ向け離陸の許可を得てRWY18を南に向かって、離陸滑走を始めました。ANA機に那覇タワーの管制官が出す離陸許可は通常「オールニッポン1694(ワン・シックス・ナイナー・フォー)クリアード・フォー・テイクオフ・ランウェイ・ワンエイト」となります。これに対しANA機は操縦を担当しないパイロットが「 」内と同じ言葉を復唱することになっています。
離陸のため加速中のANA機の前方を、東から西に横切ったのが写真と同型の、航空自衛隊の大型ヘリコプターCH-47Jチヌークです。このヘリには那覇タワーの管制官からスタンバイ(待機)の指示がだされ、離陸の許可は出ていなかったことを、今日、運輸安全委員会が明らかにしました。ANA機への離陸許可を自機への離陸許可と誤認したと空自ヘリのパイロットが述べ、中谷防衛大臣が昨夜お詫びの会見を行っています。
実は、どうやったら誤認できるのだ?と疑いたくなるほど、両機へ呼びかける管制官の第一声は違うのです。空自のCH-47のコールサインは「クレスト○○」と決まっています。「オールニッポン」と「クレスト」を聞き違えますか?ヘリの機内は騒音が大きいでしょうが、両耳を覆うヘッドフォン型のレシーバーで、管制官との交信やパイロット同士の会話を行っています。よほどの思い込みがあったのでしょうか?そして自機への離陸許可が出たと認識したのなら「クレスト○○」で離陸許可を即座に復唱しなければなりませんし、そもそも離陸許可を受けたANA機の復唱は聞いてなかったのでしょうか?防衛大臣がお詫びするのも当然かと思います。
前方を自衛隊のヘリが横切るのを見てANA機は急遽離陸を中止し滑走路上で減速しました。ANA機が誘導路へ離脱する前に、写真と同型のJTA日本トランスオーシャン航空ボーイング737-400が着陸しました。新石垣空港からのJTA620便はANA機の手前で減速を完了し、ANA機よりも手前の誘導路から滑走路を離脱しました。那覇タワーの管制官はANA機の離陸中止に気づき、JTA機にゴーアラウンド(着陸復航・やり直し)を指示しましたが、JTA機のパイロットは、そのときは既に接地していたと述べています。JTA機は結果的にANA機に追突すること無く、約500m手前で減速を完了でき、大事故には至りませんでした。逆にゴーアラウンドしていたら、ANA機の上を超えられずに衝突していたかもしれません。
那覇のように交通量が多い空港では、離着陸機の間隔が狭く、出発機が離陸滑走を始めて、ある程度のスピードが出ると、完全に浮上する前に、到着機に着陸許可を出すことが日常的に行われています。普通なら、それで何の問題もありませんが、今回のように出発機がある程度スピードを上げた状態から、離陸を中止しますと、危ない状況になります。離陸機が浮上してから、着陸許可を出すことを徹底すれば、「同一滑走路上に同時に2機」という危険な事態は回避できるでしょうが、現在の交通量をさばくことは難しいかもしれません。
今回の重大インシデントは防衛大臣が当日中にお詫びの会見を行うほど、自衛隊ヘリに非があることは明らかですが、離陸滑走中にエンジン故障や、鳥や動物との衝突など、離陸中止操作を行うことはあり得ることです。離陸中止を決断したら速やかに、それを無線で宣言し、タワー管制や、後続機のパイロットに知らせることが必要だと思います。後続機は管制の指示を待たずにゴーアラウンドを決断すべきだと思いますが、いかがでしょうか?