今週は、先週に引き続いて、愛知大学現代中国学部准教授・国際ビジネスセンター所長阿部宏忠さんの2回です。
先週阿部先生には、中国の富裕層の増加に伴う、中国の消費市場としての可能性についてお話いただきました。
今週はそこをもう少し詳しくお聞きしました。
また、大学としては極めて珍しい「国際ビジネスセンター」の役割についてもお話いただきました。
中国ビジネスの今後は
先週の阿部先生のお話で、現在の中国は、生産現場としてより、消費市場の魅力が増してきている…というお話をお聞きしました。
富裕層が、既に人口の1割(1億3千万人)に達しているという事実にはビックリ。
「従来の中国は、安い労働力で安い商品を作り、それを外国(日本、アメリカ、欧州など)に輸出してきましたが、今後は中国内で作った商品を自国で消費するという形に変ってくるでしょう。
ようやく中国もそういう状況になったという事です。」
日本からの工場進出も、従来は日本で売る製品を、労働力の安い中国で生産する…という形が多かったのですが、今後は「中国市場で売る商品を中国で作る」という形になってくるのでしょう。
日本製品の優位性は変わらない?
中国では、今迄日本製品に対しての信頼感は大きかったのですが、その優位性は今後も変わらないのかどうかも気になるところです。
阿部先生はうなずきつつも、日本企業の一層の努力の必要性を説きます。
「中国人の所得が増えれば、価格が高くても物のいい日本製品を買ってくれる層は増えるでしょう。
しかしまだ、日本製品の価格に対応できない層も多いんです。
そういう人々に合わせて、比較的手に入りやすい価格帯の商品を作る、値段を下げるような努力が必要です。
中国は広いですから、地域によって消費の動向は全然違います。
そのニーズを汲んだ生産が必要です」
今後中国市場で日本が伸びるものは何でしょうか。
阿部先生は、この質問には「サービスの分野です」と明確なお答え。
「ものが満たされて来れば、次には気分を良くするサービスが受けたいというニーズが出てきます。
日本はサービスに関しては先進国ですから、そのノウハウを生かしたサービス産業への進出が出来るんではないでしょうか」
なるほど…健康・シルバー産業、介護サービス、観光関係など、まだまだ伸びて行く産業はたくさんありそうです。
「国際ビジネスセンター」が創設されたわけ
最後に、阿部先生が所長を務める愛知大学の「国際ビジネスセンター」についてお聞きしました。
大学で、「ビジネスセンター」を持っている所って、そもそも珍しいですよね?
「はい、大学でビジネスセンターを持っているのは愛大ぐらいでしょう。
実は愛知大学が笹島に移ってくるとき、このあたり一帯を地域の国際化支援の拠点にする…という了解があり、それに合わせて作られました。
企業とは違う視点の、大学の強みを生かした国際化支援をやろうと思っています。」
大学の強みを生かしたビジネス支援とは
「1つは図書館の活用です。名駅近くの便利な場所に、6万冊という本を擁した図書館があるのですから、これを情報源として企業にも活用してほしい。
2つ目には、愛知県では一番多い愛知大学にいる留学生の存在です。
特に中国人留学生が大変多く、日本企業への就職を希望する学生も多いです。
企業と留学生をリンケージし、日本の企業で働きたい留学生にはそのサポート、外国人留学生を雇い入れたい企業には、その不安解消、たとえば文化の違いからくる摩擦など(中国人は春節には帰国したがるなど)、その真ん中に立つ役割りを果たしたいと思っています」
現実的な企業相手のお仕事が長かった阿部先生だけに、これからも様々なアイデアを駆使して、活動をしていかれる事でしょう。頼もしいですね。
来週は、5月に行われました「留学生の主張」日本語弁論大会の実行委員長、張鴻鵬さんと、その大会で最優秀賞を獲得されました金瑋婷さんのお二人をお迎えする予定です。
金さんには、最優秀賞を受賞したスピーチを、番組の中でもういちどお話していただく予定です。
どうぞお楽しみに!
(「チャイナ・なう」パーソナリティー 高野史枝)