アシアナ航空のエアバスA320が着陸に失敗した事故で、広島空港は今朝から3日ぶりに運航が再開されました。視程(見通し距離)が5,000m以上あることが条件になりますので、悪天候時には欠航になってしまいます。 今回、アシアナ機がぶつかったILS(計器着陸誘導装置)のローカライザーアンテナ(飛行機に対して、水平方向を正しく誘導する電波を出すアンテナ)が写った写真を探しましたら、何枚か見つかりました。
この写真は今年の元日、強風のセントレアでRWY18(北から南に離陸する滑走路)で待機するJALのボーイング787-8です。後方にANAのボーイング767-300も隠れています。JAL機の左側に、白いフェンスの手前に見えるオレンジの構造物がローカライザーアンテナです。ボーイング787-8の胴体よりも高い位置にあるように見えますが、レンズは640mm相当の超望遠ですので、スカイデッキから撮りますと、遠くにあるものが画面の上の方にに写ります。実際はフェンスよりも、やや高い位置にアンテナがあるものと思います。セントレアも広島と同様、最も精度の高いカテゴリー3のILSを備えています。
沖縄・下地島パイロット訓練飛行場の撮影ポイント、RWY17エンドの外周道路は、すぐそばにILSのローカライザーアンテナがあります。写真は2011年7月に撮影したANA(当時はAIRNIPPON)のボーイング737-700が空港の敷地上空に入る瞬間です。ほぼ真下に見える赤い物体がグライドスロープアンテナです。このアンテナは滑走路の反対側、RWY35にアプローチする飛行機のための設備です。高度60m以降はパイロットが目視で着陸するカテゴリー1のILSですが、下地島空港はパイロットの訓練のための空港ですので、両方向にILSが備えてあります。
本題からは外れますが、下地島空港に旅客ターミナルを整備して、宮古空港の機能ををこちらに移転して欲しいと思います。3,000m滑走路に平行誘導路があり、両方向にILSを備えた立派な空港を遊ばせておくのはもったいないです。
さて、こちらは2012年の7月に下地島で撮影したANAのボーイング767-300の訓練シーンです。機体の左下に見える、赤い梯子を横にしたような形の物がILSローカライザーアンテナです。右下に見える赤白チェックの箱は、ローカライザーアンテナから電波を出すための、送信機などが収められた設備です。下地島空港の滑走路は長さ3,000m、幅60mで、広島空港と同じです。
下地島空港で別のアングルから撮った写真をご覧いただきましょう。2011年7月に東側からANAのボーイング767-300が飛行場の敷地上空に差し掛かるところです。機体の下、右側に赤白チェックの箱型建物、その左側にわずかですがローカライザーアンテナが写っています。外周道路の車の高さは約1.5メートルありますので、赤白チェックの建物の高さは低い部分で約3mになります。ローカライザーアンテナも、ほぼ同じ高さですね。
私が申し上げたいのは、広島空港でアシアナ機がぶつかったローカライザーアンテナの高さは6.5mと報道されていますが、アンテナが設置された地面が、実は滑走路面よりも3m以上低いために、金属のパイプなどで嵩上げされて6.5mになったのではないか?ということです。セントレアのアンテナの高さは今回の写真ではよく判りませんが、下地島のアンテナは3mくらいと推測できます。滑走路の反対側上空の到着機に電波を出すのですから、地上に設置するのは当然として、そのアンテナの真上を着陸機が通過するのですから、最小限の高さに抑える必要があります。
広島空港のローカライザーアンテナが6.5mの高さがあると聞き、少々違和感を覚えましたが、嵩上げされたのなら納得できます。アシアナ機は滑走路先端から300m少々手前の、滑走路面から高さ3mほどのアンテナに、やや機首上げの姿勢で、まともにぶつかったことになるのです。もう少し低かったら手前の土手に激突していたかもしれません。大惨事にならなくて本当に良かったです。