昨夜8時過ぎ、広島空港に着陸しようとした韓国・インチョン発のアシアナ航空、エアバスA320型機が、滑走路手前のILSローカライザーアンテナ(計器着陸を援助する装置のうち、方向を示す電波を出すアンテナで、反対側から着陸する航空機を誘導します)にぶつかり、アンテナを破壊するとともに、自らの機体も損傷を受けながら、滑走路手前に接地し、その後、滑走路の途中から左へそれ、草地に出てからほぼ逆向きになって停止しました。
火花の目撃情報はありましたが、燃料に引火することは免れ、火災は発生せず、乗客・乗員81人は全員シューターで脱出しました。報道によって人数にばらつきがありますが、22〜27人の負傷者が出て、いずれも軽症だということです。火災が起きたり、停止位置が先に延びて機体が崖の下まで行った場合、大惨事になっていたかも知れません。写真は事故を起こしたアシアナ航空のエアバスA320の同型機で2011年に静岡空港で撮影したものです。
こちらも2011年に静岡空港で撮影した、事故機と同型のアシアナ航空のエアバスA320です。広島空港の滑走路は、ほぼ東西の10-28の方向で、幅60m、長さは3,000mあります。標高が300m少々と高く、国内の空港では松本、福島に次ぎ3番目に高い位置にあります。山に囲まれ霧や雲が発生しやすく、西から進入するRWY10には最高グレードのカテゴリー3のILS(計器着陸誘導システム)を備え、A320であれば自動着陸も可能です。
しかし、アシアナ機が着陸した東から進入するRWY28にはILSが備えられていません。1時間前には3.2mの北西の風が吹いていたので、広島空港の使用滑走路がRWY28であったことは理解できますが、午後8時の時点で北北西の風0.9mに弱まっています。急激に視界が悪化したとの情報もありますが、その時点で有視界飛行での着陸をあきらめ、ゴーアラウンド(復航)してレーダーでRWY10のILSコースに誘導してもらえば、15分後くらいに何の問題も無く着陸できたと思います。
かつて熊本空港で私が搭乗していた当時JEX(ジャルエクスプレス)のボーイング737-400が、上空からは空港が見えていたため、ショートカットのビジュアルアプローチで進入したところ、黄砂のため滑走路を見失い、ゴーアラウンドして大回りのILSアプローチで着陸したことがあります。安全のためには無理は禁物だと思います。
両方向にILSを備えれば良いのですが、現実には両方向に備えているのは、成田、関空、セントレア、新千歳、福岡と訓練飛行場の下地島ぐらいです。(米軍基地を除く)ちなみに羽田の滑走路は離着陸の方向が限定されていますので、ILSは片方にしかありません。
事故原因の詳細は今後、明らかになっていくでしょうが、広島空港はアシアナ機の機体を片付け、滑走路と誘導灯を補修するまでは仮復旧ができないと思います。さらにILSの復旧までにはかなりの期間がかかるでしょうね。