愛知大学では、毎年8月に中国・内モンゴルのクプチ砂漠・恩格貝で植林ボランティアを続けています。
今週は、愛知大学緑の協力隊<ポプラの森>植林ボランティア隊の隊長を勤められた、愛知大学副学長の砂山幸雄さんをゲストにお迎えして、その時の様子や意義をお伺いしました。
本日のゲスト紹介
本日のゲスト、砂山幸雄(すなやま ゆきお)さんは、1954年生まれ、石川県のご出身です。
1978年に東京大学教養学部をご卒業ののち、1981年に東京大学大学院社会学研究科修士課程を修了、東京大学社会学研究科博士課程、東京大学助手、愛知県立大学外国語学部助教授を経て、2003年4月に愛知大学現代中国学部教授に着任されました。
2009年から現代中国学部長、2011年に愛知大学教学担当副学長に就任され、現在に至っています。
ご専門は現代中国政治論や現代中国思想・文化研究です。
この植林ボランティアの概要を教えていただけませんか。
「愛知大学の植林ツアーは、大学創立50周年記念事業のひとつとして、1995年に、中国・内モンゴルのクブチ砂漠で始まりました。
これは、鳥取大学名誉教授で、砂地農業の専門家だった遠山正瑛先生が、クブチ沙漠で取組んでおられた沙漠の緑化事業に、愛知大学同窓生や学生がボランティアとして参加するという形で始まったものです。
初めは「緑の協力隊」という名前で行っていましたが、2004年から愛知大学緑の協力隊<ポプラの森>と名前を変えて植林活動を続けています。
昨年までに、延べ20回、650名以上のボランティア参加者の手によって、16000本以上のポプラの木が植えられています。
今年は、<ポプラの森>の第11次隊で、学生、社会人を合わせて15名が参加しました」
今年は8月16〜8月22日の6泊7日という日程で行われた植林活動。
まだお戻りになったばかりで印象も強いことでしょう。
早速今年の様子をお聞かせ下さい。
「初日は中部国際空港から北京に飛んで、国内線に乗り換えて内モンゴルの大都市、包頭(パオトウ)で一泊しました。
北京では少し時間がありましたので、万里の長城、居庸関長城にも行きました。
2日目はバスでパオトウから植林の現場である恩格貝(おんかくばい)に移動して、午後は遠山先生のお墓参りをしてから沙漠ウオッチング、夜は沙漠講座です。
3日目と4日目、5日目の午前中まで、植林活動、育ったポプラの枝打ち、つまり剪定作業、その枝を使った砂止め作業など、一連の活動を行いました。
4日目に内モンゴル大学の学生、教員、その家族が合流しましたので、その夜は交流会を行いました。
5日目の午後に恩格貝を離れて、バスでフフホトに移動しました。
6日目は内モンゴル博物館の参観と、内モンゴル大学訪問、夜はお分かれの会、そして翌日は最終日で飛行機で北京に移動して、帰国です。
充実した一週間でした。
砂漠での植林のときの様子はいかがでしたか
「もちろん沙漠の上は暑くて、日差しも厳しいですから、帽子とか、サングラスとか、ペットボトルの水とかは欠かせません。
でも、日が陰ったりすると、風は気持ちよかったですし、朝夕も涼しくて、トータルすると名古屋にいる時より過ごしやすかったんじゃないかなって思いますよ。
それに、この地方の沙漠の砂は西のシルクロードのほうの沙漠の砂と違って粒子がホントに細かくて、握るとまるで液体みたいにこぼれるんですね。
なるほど、これだったら、春先風に巻き上げられて黄砂になって日本に来るのもわかるなぁ…と思えました。
でも、ちょっと沙漠を掘ると、下のほうの砂は少し湿っているんです。
つまり、雨も少ないながらも降っていて、それがこの砂にも浸透して、とどまっているんです。
これがあるからポプラも育つんです」
今年は何本ぐらいの植樹が出来たんですか。
「正確に言いますと501本です」
ご覧になったクブチ砂漠、恩格貝のポプラの森の様子はいかがでしたか。
「恩格貝のホテルのそばに小高い展望台があってそこから見ると、北も、西も、東も一面見渡す限り緑が広がっていました。
ここが20年ちょっと前はほとんど沙漠だったと思うと、感動します。
愛知大学のポプラの森は南側に広がる緑の最前線にあるのですが、その先はずっと沙漠です。
これまで7次隊、8次隊、9次隊、10次隊の植えたポプラは、枯れたものもありますが、しっかり根付いたものも多くて、なるほどこんなふうに緑が広がっていくんだなということがよくわかります」
今年は例年に比べて、参加者がちょっと少なかったんですね(毎年だいたい30人前後)。
減った理由は何でしょうか
「最近の日中関係の悪化も影響していると思いますが、最近の中国に関して大きく報道される食品の安全問題だったり、少数民族問題に関わるテロ事件だったりの影響も大きいのかなと思います。
ちょっと残念でしたね」
今回隊長を勤められて、砂山先生ご自身が一番大変だったことは何だったでしょうか。
「とくに大変というほどのことはありませんでしたが、やはり何より、参加者の安全と健康、特に、隊長のシャレではありませんが(笑)、体調には気をつかいました。
今回が海外旅行は初めてという人もいましたし、日本とは全然環境が異なるところに行くわけですから、少し心配でしたが、全く問題なく終わってほっとしました」
忘れられない思い出といえば…
「そうですね、沙漠で見た満点の星空でしょうか。夜はみんなで沙漠に行ってそこで寝転がって星空観察会をしました。
名古屋だったら肉眼ではせいぜい2等星くらいまでしか見えないと思いますが、4等星、5等星くらいまで全部見えるわけです。
北極星、カシオペア、北斗七星から南のさそり座まで全部です!
天の川も地平線から立ち上がって、反対の地平線に消えるまで、帯のようにつながって見えます。
文字通りミルキーウェイです。
そこに、流れ星がスーッと流れるわけです。
数分ごとに一個ぐらいは見えます。
さらに、小さな人工衛星の光が星々をかき分けるようにスイスイを動いていくんですね。
1時間ぐらい、ずっと見ていると、地上の私たちと宇宙が直接向き合っているような、不思議な感覚を覚えました。
ここは中国だ、とか私たちは日本人だ、なんてことは考える必要もないような世界です。
「生まれて初めて流れ星を見た」という女子学生もいましたけど、きっとみんなにとってもすばらしい想い出になったと思います」
来週は、今週ご登場いただいた愛知大学副学長の砂山幸雄さんに加え、今回初めて植林に参加されたという愛知大学原題中国学部4年生の伊藤純規さん(社会人入学の学生さんなので、現在62歳です!)もゲストにお迎えします。
どうぞお楽しみに。
「チャイナ・なう」パーソナリティー 高野史枝