本日のゲストは、先週に続いて北京大学国家発展研究院教授の徐晋涛さんです。
先週は、徐教授に、北京市の交通渋滞解決のための新しい政策「混雑税の導入」についてお聞きできました。
この政策は、まだ中国でも公表されていない「特ダネ」だったんですよ。
今週は「北京市の大気汚染改善政策」についてお聞きしています。
通訳は、先週に引き続き、愛知大学経済学部教授の李春利さんにお願しました。
北京市内の交通渋滞で、排気ガスによる大気汚染は一層深刻になっているようですね。
汚染の現状はいかがですか。
北京では2012年の年末から2013年春にかけて、深刻な大気汚染に見舞われました。
とりわけ2013年は、最初の100日間の中で、大気汚染が基準を大幅にオーバーした日が43日もあって、非常に深刻な状況にあります。
また中国全土を見ても、重度の大気汚染が2013年1年間に30日もありました。
これは例年より10日長くなっています。大気汚染が確認された地域は、中国の国土面積の4分の1、30何省のうち20いくつかの省が影響を受けています。
大気汚染の状況は待ったなしですから、改善して行かなくてはなりません」
先週は、北京市の 環状線において混雑料金を徴収することで、排ガス規制につながるというお話をお聞きしました。
それ以外にはどんな方策を取ろうとしていますか。
重要なポイントは3つあります。
① 広域地域の連携
② エネルギー構造と燃料転換
③ 排ガス規制
です。
1つ1つ説明をすると、
① 北京市の大気汚染を改善するためには、地域連携の姿勢が重要です。
今まで大気汚染改善の取り組みは、それぞれの地域がそれぞれに取り組んできましたが、北京市周辺の省、自治区の状況を、同時に改善しなくては、北京の大気汚染の改善は出来ません。
② エネルギー構造、燃料転換、産業構造の転換が必要です。
北京市では燃料転換がずいぶん進んでいます。石炭から天然ガスへの転換は、もう7割近く進みました。
ただ、北京市近くの河北省、山西省、内モンゴル自治区では、まだ石炭燃料に大きく依存しています。
これらの省で、エネルギー、産業構造の転換が進まない限り、北京市の大気汚染の改善は難しいです。
③ 自動車の排ガス規制は、先週お話した混雑料金の導入です。
その効果が表れれば、環境にもプラスの影響が表れるという事です。
もう一つ重要なのが、燃料(ガソリンや軽油)の品質改善です。その品質が改善されない限りは、大気環境はよくなりません。
従って北京市と中国全土で、2017年までに、燃料品質の大幅な改善を打ち出している所です。
先週、今週と続いて、固いお話ばかりになってしまいました。
最後に徐教授には、日本の印象について、お話していただきましょう。
「日本へ来たのは4回目です。前回来たのが2009年ですから、5年ぶりだったんですが、予想したほどの変化がなかったことに驚きました。
報道では日本の経済は不景気と聞いていたのですが、実際に見ると、不景気の印象はありませんでした。
名古屋の駅前には高層ビルが次々にできているし、ショッピングセンターは賑わっていました。統計は日本の経済をずいぶん低く見積もっているんではないでしょうか」
先週と今週は、北京大学国家発展研究院教授の、徐晋涛さんをお迎えしてお話をお聞きしました。
中国の交通渋滞の解消と、それとも関連する大気汚染の問題をどう解決しようとしているのかという貴重なお話でした。
さて来週は、3月から7月まで行われた中国天津市、南開大学での愛知大学現代中国学部の現地プログラム(短期留学)で、団長を務められた山崎真依さんと、副団長を務められた増田鋭さんのお2人をゲストにお迎えして、現地での様子をお話していただきます。
来週も、どうぞお聞き下さいね。
(「チャイナ・なう」パーソナリティー 高野史枝)